ワーキングメモリは、子どもの発達などでよく使われる言葉ですが、大人の仕事や遊び、趣味など、生活を楽しむことにも関係してきます。この記事では、ワーキングメモリを鍛えるためにおすすめの遊びを紹介しています。ワーキングメモリの鍛え方や解放の方法についても説明しているので、楽しみながらワーキングメモリを働きやすくしてみてください。
ワーキングメモリの特徴と鍛えるメリット
ワーキングメモリとは、作業などに必要な情報を一時的に保存したり、処理したりする能力のことです。作業記憶や作動記憶と呼ばれることもあります。近い意味を持つ言葉に短期記憶がありますが、短期記憶は「情報を記憶する・覚えておく」のみを指すことに対し、ワーキングメモリは情報を記憶し「処理する」ことまで行う点で違います。
一般的に、ワーキングメモリがうまく働くほうが物事を効率よくこなすことができるといわれています。ワーキングメモリがどの程度働くかについて個人差がありますが、ワーキングメモリを鍛えることで働きやすくなり、以下のようなメリットが得られます。
- ワーキングメモリを鍛えるメリット
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- 仕事や家事の効率や能率が上がる
- 運動・遊びなど趣味のパフォーマンスが上がる
- ボケ防止になる
- ネガティブな感情になりにくくなる
仕事や家事の効率や能率が上がる
ワーキングメモリがうまく働く人は、いわゆるマルチタスク(短時間で切り替えながら複数の作業を行うこと)をうまくこなせるため、仕事を効率よく進められます。料理・洗濯・掃除・片付けなどの家事をテキパキこなすためにも、マルチタスクが必要です。ワーキングメモリを鍛えてマルチタスクをうまくこなせるようになると、仕事や家事の効率や能率が上がります。
運動・遊びなど趣味のパフォーマンスが上がる
ワーキングメモリを鍛えるには運動が役立つといわれていますが、ある研究では、ワーキングメモリを鍛えて働きやすくすることは、運動・スポーツの競技のパフォーマンスを向上させるという結果が出ています。また、eスポーツ・TVゲーム・ピアノなどの楽器の演奏のように複数のタスク・作業を同時で行う遊び・趣味もパフォーマンスが向上する可能性があります。
ボケ防止になる
認知症や物忘れは大脳の前頭前野が関係しているといわれています。前頭前野はワーキングメモリも司っているため、前頭前野を鍛えることは、ワーキングメモリを鍛えるだけでなく、認知症や物忘れ、ボケ防止にもつながると期待されています。また、前頭前野は脳の他の領域のコントロールにも関係しているため、ワーキングメモリのために前頭前野を鍛えれば、脳全体を活性化することにもつながります。
ネガティブな感情になりにくくなる
ワーキングメモリが働きにくくなると、物事をうまく進められなくなる・考えられなくなる・覚えられなくなる・忘れっぽくなるなどの問題が起こります。これらの問題を多く感じるようになると、不安やストレスが増加しネガティブな感情を抱きやすくなり、うつなどの心の不調も起こりやすくなります。ワーキングメモリを鍛えることで、不安やストレスを感じにくくなったという報告もありますし、心の不調が回復しやすくなるともいわれています。
ワーキングメモリを鍛えられるおすすめの遊び|ゲーム、運動、レジャーなど
- ワーキングメモリを鍛えられる遊びの例
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- スマホゲーム
- PCゲーム・テレビゲーム
- 料理
- 家庭菜園・週末農業
- ジョギング・サイクリング
- 登山・キャンプ
- 釣り
スマホゲーム
スマホゲームは、高機能のPCゲームやテレビゲームに比べるとマルチタスクの必要性が低く、ワーキングメモリを鍛える力も少ないといわれています。しかし、スマホゲームには、脳トレやパズルゲーム、記憶力ゲーム、集中力ゲーム、計算ゲームなど、手軽にワーキングメモリを鍛えられるゲームがたくさんあるというメリットがあります。
また、普通のRPGやアクションゲームをするだけでもワーキングメモリは鍛えられますし、チャットなどでコミュニケーションを取りながらプレイすることもワーキングメモリを鍛えるためにはおすすめです。ポイントを貯めるという目的に向かってゲーム技術を鍛えることも、ワーキングメモリを鍛えることにつながるでしょう。スマホゲームを初めてやる人は、まずは自分ができそうな簡単なゲームからチャレンジしてみてください。子どものころやっていたなつかしのゲームもあるので、そちらからチャレンジしてみても良いと思います。
PCゲーム・テレビゲーム
実は、PCゲーム・テレビゲームは、前頭前野を鍛えるためにおすすめの遊びです。脳トレなどのように、前頭前野を鍛えるために作られたPCゲーム・テレビゲームを遊んでも良いですし、マインクラフトのように思いっきりワーキングメモリを駆使できる流行りのPCゲーム・テレビゲームにチャレンジしてみても良いでしょう。フォートナイトやApex Legend、スプラトゥーン3のようなFPS(First Person Shooter:プレイヤー目線の画面で標的を打ち落とすなどのプレイを楽しむゲーム。ここでは三人称視点のTPSも含む)も、ワーキングメモリをとても鍛えられるのでおすすめです。
任天堂Switch、プレステ5などのTVゲーム機のゲームは価格が高い印象があるかもしれませんが、比較的安価のものもありますし、なつかしのゲームがセットになっているものもあります。また、SteamのようなおもにゲーミングPCで使うゲームプラットフォームのアカウントを作れば、PCなどの複数の端末でゲームを遊べますし、なかには無料で遊べるゲームもあります。スマホゲームよりも難しいと感じる人もいるかもしれませんが、クリアしたときの喜びも倍増しますし、楽しみかたも広がります。仕事でも使えるゲーミングPCを購入し、総合的なPCスキルを磨くこともおすすめです。
料理
お湯を沸かしながら食材を切る、サラダ用の食材を水にさらしながら別の料理用の食材をフライパンで炒めて味付けする、お鍋で煮込み具合を見ながら下ごしらえで使ったフライパンを洗うなど、実は料理は複数の作業をマルチタスクでこなす必要のある家事です。全く自炊をしないという人は、1日1食自炊することを継続するだけでも、マルチタスクを鍛えられる可能性があります。
いきなり難易度の高い料理にチャレンジして失敗すると長続きしなくなるので、カット済みの食材を使う・オートクッカー(電気圧力鍋・オーブンレンジなど)を活用する・ミールキット(coop・Oisix・ヨシケイなどにある、材料とレシピがセットになった商品。食材がカットしてあり、付属の調味料を混ぜ加熱するだけのものもある)をうまく活用することをおすすめします。料理に慣れてきたら、自分が使いやすい「お気に入りの調理器具」を集めるという楽しみかたもできます。
家庭菜園・週末農業
家庭菜園や週末農業には、園芸療法に似た効果が期待できます。園芸療法とは、農業や園芸活動を通して健康の増進や生活の質の向上などを目指すリハビリのひとつです。園芸療法は、植物を育てることを通して身体の動きのバランスを整える効果が期待でき、ストレス軽減や社会性の向上も期待できます。園芸活動を行うと前頭前野の血流量が高まることから、認知症の予防やリハビリとして園芸療法が行われたり、子どもの発達支援に取り入れられることもあります。
ゲームやパズル、計算ほど強い刺激はありませんが、のんびりと自然にふれあい、リラックスしながらワーキングメモリを刺激・解放できるところは大きなメリットです。まずは、鉢植えやプランターで育てやすい植物から育て始め、少しずつ難易度を上げていきましょう。料理やアウトドアと組み合わせると、楽しみや刺激をさらに高められます。
ジョギング・サイクリング
ランニング・ジョギング・サイクリングなどの中程度の有酸素運動は、前頭前野の活性化を促すといわれています。ジョギングやサイクリングをしながら音読する・計算したりするなど、頭を使うようにすると、ワーキングメモリをさらに鍛えられます。
ただし、頭を使いながらジョギングやサイクリングをするときは、交通事故やケガなどに注意が必要です。心配な場合は、家庭用のステッパーやランニングマシン、フィットネスバイク・スピンバイクなどを使うことをおすすめします。
登山・キャンプ
登山やキャンプなどのアウトドアレジャーは、マルチタスクの作業が必要になる場面が多いです。また、焚き火をしながらのんびり過ごすなどして、脳を休めることもできます。登山やキャンプなどのアウトドアレジャーは、ワーキングメモリを刺激して鍛えつつ、折をみて脳を休めてワーキングメモリを解放できる、おすすめの趣味・遊びです。
アウトドアツール(アウトドアの道具のこと。―グッズ・―ガジェットとも)を集めることでさらに安全性を高めるができますし、アウトドアツールを駆使する・収集するという楽しみも増えます。本格的な登山・キャンプでなくても、森林浴やハイキング、トレッキングでも、ワーキングメモリを鍛えたり、解放したりすることができます。
釣り
釣りをすると、ドーパミンの分泌が活性化されるといわれています。ドーパミンは脳内報酬系の活性化(快いと感じる原因になる)を担う神経伝達物質であり、多幸感・快感・意欲・集中力などに関係していて、ワーキングメモリの働きにも関係していると考えられています。
釣りにはリラックス効果や心の不調の緩和に役立ち、認知症の予防にも役立ちます。体力・筋力の増強にもつながるので、ぜひチャレンジしてほしい遊びです。いきなり海・川で釣りをするのは難しいかもしれませんが、最近は設備が整っていて景色がきれいな釣り堀も増えてきました。釣り堀では、釣り竿などの釣り道具一式がレンタルできるので、手ぶらで楽しむことができます。
ワーキングメモリは解放するのも大切|解放の方法とは?
ワーキングメモリの解放とは、ワーキングメモリに記憶されている不要な情報を解放し、新しい情報を記憶できるようにすることです。ワーキングメモリは機能(処理速度)を高めて働きやすくすることはできますが、容量を大幅に増やすことは難しいです。適切なタイミングでワーキングメモリを解放すると、効率よく作業や記憶ができるようになります。解放する方法はいくつかありますが、以下の方法がやりやすいと思います。
- ワーキングメモリを解放する方法の例
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- メモをとる
- 瞑想する
- 睡眠をとる
- 脳の栄養を補給する
メモをとる
メモをとったり、タスクマネージャーに優先順位を入力したりすることで、ワーキングメモリは解放されます。これは、情報をメモにアウトプットすることで「メモを見れば思い出すから、忘れても大丈夫」と脳が認識しやすくなることが原因と考えられています。リスト化したり、細分化して記入したりすると、さらに解放しやすくなります。
瞑想する
瞑想のことを「マインドフルネス」と呼ぶこともあります。ワーキングメモリを解放するための瞑想は、この「マインドフルネス」のことであり、過去の経験・雑念・先入観などにとらわれることなく、今ある感情・気持ち・考え・体の状態などをあるがままに感じ、そのことを受け入れることをいいます。瞑想をしながら、五感を通じて頭の中に飛び込んでくる情報を受け流すことで、ワーキングメモリが解放されやすくなります。
睡眠をとる
ワーキングメモリを解放するには、脳を休養させることも大切です。脳にとって一番の休養は睡眠です。睡眠時間を十分に確保し、質の高い睡眠がとれるよう、睡眠環境を整えましょう。疲労解消を促すリカバリーウェアやリカバリー枕もあるので、ぜひ試してみてください。また、昼寝も脳の休養に役立ちますので、集中力が続かなかったり、眠気ががまんできなかったりするときは、思い切って30分弱の短時間の昼寝をとることをおすすめします。
脳の栄養を補給する
ブドウ糖は、脳の大切なエネルギー源です。ブドウ糖が不足すると、集中力・判断力・記憶力などが低下し、ワーキングメモリも働きにくくなります。疲れて作業がうまく働かないときは、ひとかけらのチョコや氷砂糖などを食べてみると、効率よく作業をこなせる場合があります。
ただし、ブドウ糖のとり過ぎは血糖値スパイク(血糖値が急上昇した後に急降下する、血糖値の乱高下が起こる現象)や肥満などの原因になります。ブドウ糖は、あくまでも少量を補給することが大切です。基本的には、血糖値を緩やかに上昇してくれる低GI値食品(玄米・全粒粉パン・全粒粉パスタなど)を主食にするなどして、血糖値が急激に変化しないようにしてください。栄養は相互に機能しあいながら心身に働きかけるので、基本的には、穀類・豆類・野菜類・海藻類・肉類・魚類・乳製品をバランス良く食べることが、脳、及び、全身の健康づくりに役立ち、ワーキングメモリの解放や働きやすくすることにつながります。
ワーキングメモリが低下しているときのサインについて
ワーキングメモリを鍛えたり、解放したりすることは、定期的に行ってほしいですが、以下のような変化は、ワーキングメモリが低下しているサインとして現れている可能性があります。まずは、ワーキングメモリを解放し、たっぷり休養をとるようにしてください。
なお、ワーキングメモリの低下がうつなどの心の不調から起こっている可能性がありますし、ワーキングメモリの低下が心の不調を引き起こす可能性もあります。気になる変化・症状・サインに気づいたときは、かかりつけ医や心療内科などの専門の病院を早めに受診するようにしましょう。
- ワーキングメモリが低下しているサイン
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- 忘れっぽくなる・覚えられなくなる
- タイミングよく思い出せない
- 集中できない
- ミスや忘れものが増える
- 切り替えや整理ができない
おわりに:ワーキングメモリは鍛える&解放で働きやすくすることが可能。ただし、著しい機能低下に注意
ワーキングメモリは、仕事・家事・スポーツ・趣味の効率や能率に関係するものであり、適切に鍛えたり解放したりすることで働きやすくすることができます。ワーキングメモリを働きやすくすることで、仕事や家事がはかどることはもちろん、気持ちが前向きになり、趣味もより楽しみやすくなります。毎日の生活習慣や仕事のやり方などを見直して、ワーキングメモリを働きやすくしましょう。ただし、ワーキングメモリの機能低下は心の不調や病気などが原因になることもありますので、気になる状態が続くときは早めに病院に相談しましょう。
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